特集記事~拝啓、Aさん。~

『拝啓、Aさん。お元気でお過ごしですか?』

人生は出会いと別れの連続です。

もちろんこの「緑寿荘」でも例外ではありません。

大切な方をお引き受けし、大切な方をお見送りする。事情は様々ですが、その繰り返しです。

時として、お見送りさせて頂いた方の余韻に浸る間もなく、新しくお引き受けする方の対応に当たらなければならず四苦八苦する今日この頃・・・

ところがある日、この激流のような時間の流れを一瞬でストップさせ、職員の心をほっと温めてくれたエピソードがありましたので、ここでご紹介したいと思います。

昭和4年生まれのAさんと私たちが出会ったのは6年前です。最愛のご主人に先立たれたAさんはお一人暮らしの不安から緑寿荘へ入居する事となりました。

Aさんの性格はとにかく明るく、Aさんの周りはいつも賑やかです。時として乱暴な口調でワガママを言って職員を困らせる事もありましたが、決して悪意はありませんし、とても素敵な甥御様やケアマネさん、人情味溢れるヘルパーさんやリハビリの先生などのご協力もあり、緑寿荘での生活はとても充実したものとなりました。

しかし、そんなAさんに悲しい出来事が起こります。今年の6月に転倒してしまったのです。すぐに救急搬送されました。診断の結果は大腿骨頸部骨折でした。業界の方でしたらお分かりかとおもいますが、最悪の事態です。

しかし、Aさんは諦めません。再び緑寿荘での生活に戻る事を夢見て必死にリハビリを頑張ります。

7月12日。主治医からの説明。私も同席しました。

Aさん、ご家族様、ケアマネさん、私たち。すべての人たちがAさんの回復を祈っていました。

しかし、結果は残酷です。

「高齢でもあり、回復は芳しくありません。緑寿荘に戻るのは難しいでしょう。介護施設への入居をおすすめします。」

これが主治医の先生からのお言葉でした。結局、Aさんは特養に入所することとなりました。

このようなケースは決して珍しくはありませんが、慣れることはありません。また慣れてしまってもいけないと思います。

気持ちの切り替えは大切です。しかし、やはりAさんのケースは職員のメンタルに重くのしかかります。

Aさんのいなくなった緑寿荘はお祭りのあとのように、シーンと静まり返っています。いまでもAさんの元気な声がこだましてきそうです。

さみしい。やりきれない。特養では元気に生活しているだろうか。様々な感情が交錯します。

胸にポッカリ穴が開いてしまいました。そんな心境の中、Aさんのいなくなった居室を見に行きました。

荷物はすっかり片づいていました。6畳一間の和室はいつもより広く感じられました。何とも表現しがたい喪失感が私の心に襲ってきます。

そんな中、ふと視線を下に向けると目を疑うような光景が飛び込んで来ました。

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がらんとした居室に色鮮やかな花束が・・・

もっと近づいてみました。

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「ありがとう」  Aより

私はその場に立ちつくし号泣しました。

Aさんが特養に入った後、緑寿荘の職員に向けた感謝のメッセージです。色画用紙の花束も頑張って作ったそうです。

ご家族様が荷物を居室から全て運び出した後にそっと置いて行って下さったものです。

この粋なサプライズに職員は大変励まされました。

『拝啓、Aさん。お元気でお過ごしですか?めまぐるしい業務の中、一旦時を止め、Aさんとの思い出に浸る機会を与えてくださってありがとうございます。Aさんが特養で心安らかに生活して頂けることを心よりお祈りしています。私たちは明日からも前を向き、ご利用者様のおひとりおひとりのご支援に邁進して参ります。   緑寿荘 職員一同』